2023年06月09日
世界へ進化を続ける『太鼓の達人』に込めた想い
木水 克典KATSUNORI KIMIZU
【プロフィール】
2007年、バンダイナムコゲームス コンテンツ制作本部入社。2012年にバンダイナムコスタジオ コンテンツデザイン4部、2016年にバンダイナムコエンターテインメント AM事業部 企画開発部をへて、2018年にバンダイナムコアミューズメントに異動。現在、『太鼓の達人』(ゲームセンター版)の3代目プロデューサーを務めている。
業務用ゲームのゲームデザイナーからスタートし、ディレクターをへて、現在はビジネス面から運営を支えるプロデューサーとして活躍している木水さん。幅広い世代から愛され続けている『太鼓の達人』のプロデュースに、その経験はいかんなく発揮されています。後編ではご自身のキャリアや、ものづくりへの情熱を、熱く語っていただきました。
※内容は、2023年2月の取材をもとに構成されています。
プロデュースの仕事で大切にしていることはなんですか。
製品やサービスは、誰かが魂を削り、作品に込めることで生まれるものだと思います。そのため、クリエイティブに真剣に取り組む開発者や技術者へのリスペクトを常に大切にしています。
プロデューサーとして、必要な場面には踏み込みますが、作り手の思いを無視するような対応は避けたいと考えています。むしろ、開発者や技術者の想いを積極的に汲みとり、ユーザーさんへ届けたい。そのためには、チームメンバーと共通認識を作ることが不可欠です。「5年後、10年後にはこうあっていたい。そのために、現在はこれが必要だ」と、ビジョンを根本から説明し、変更が生じた際も丁寧に説明するよう心掛けています。
私はもともと、スクリプトを書いたり仕様書を作成したりと、開発現場で手を動かしてゲームを作り上げていく仕事をしていました。やがてユーザー調査や企画立案、法務とのやりとりなど柔軟に対応するなかで、プロデュースに携わるようになりました。開発現場での経験は、プロデューサーとしての自分の持ち味になっていると思います。
プロデューサーのお仕事のやりがいを教えてください。
ユーザーさんに喜んでいただけることが、大きなやりがいです。ポジティブな言葉はもちろん、ご指摘もきちんと受け取り、成長の糧にしています。
『太鼓の達人』では、ユーザーさんとのコミュニケーションの場を増やしたいと考え、一時期途絶えていたYouTubeでの生配信を復活させました。配信中にコメント欄を流れるメッセージを目にすることは大きな刺激です。またTwitterなどのSNSでコメントを寄せていただいたり、テレビなどのメディアで取り上げていただくことも、とても嬉しいです。
また、新しい国や地域へ『太鼓の達人』を展開できると、チーム全員の頑張りが実ったようで大きな達成感があります。稼働台数を増やせると、世界中で遊んでいただく機会が増えているのだと実感できます。
ただ、部品調達を安定的に行うことは難しく、数年単位の計画を立てて取り組んでいます。
これからの夢や目標を教えてください。
世界中のゲームセンターに『太鼓の達人』最新版を合計1万台設置し、“国民的音楽ゲーム”から“世界的音楽ゲーム”へとステップアップさせるという夢があります。
昨今は、スマートフォンのゲームアプリや、家庭用ゲーム機でのオンラインマルチプレイなど、デジタル空間での遊びがとても充実しています。しかし『太鼓の達人』のようなリアルアミューズメントには、同じものが好きな人どうしで空間を共有し、新たな出会いや想い出をつくるパワーがあります。『太鼓の達人』の魅力を未来へ、そして世界へ届けることが、3代目プロデューサーである自らに課したミッションです。
また私自身、子どものころからゲームセンターに通い、音楽ゲームは“青春”でした。
ゲームセンターのあり方は大きな転換期を迎えつつあり、今後どのように発展していくのか、まだわかりません。ですが自分を含めたチームの力を蓄え、製品を世界に届けるノウハウを生かして、新しい音楽ゲームを生み出してみたいとも考えています。