九条 彩華(あやか)「フランス料理店にて」

○月×日 晴れ。
今日は、××さんがどうしてもわたくしと食事がしたいとおっしゃるので、「ラ=カムパネラ」でディナーにお付き合い。

××さんったら、転校生の神崎さんといつも一緒のくせに、わたくしを食事に誘うなんて・・・。
ま、神崎さんなんて、所詮わたくしの敵ではございませんわ。
ああ・・・なんて罪作りなわたくし・・・ほ〜っほっほ!

でも、××さん・・・せめて、ちゃんとお店の予約ぐらい入れておいて欲しいですわ。
まったく・・・。


主人公 「き・・・緊張するなぁ・・・(キョロキョロ)」
あやか 「もぉ・・・あんまりキョロキョロなさらないで下さる?恥ずかしいですわ」
主人公 「い・・いや〜、こういう高級な店慣れてなくってさ〜・・は・・はは・・」
あやか 「はぁ〜・・・まったく・・・これだから、庶民は・・・」
主人公 「え?なんか言った?」
あやか 「いえ、別に」
ウェイター 「・・・メニューでございます」
主人公 「あ・・ども・・・・え〜っと・・・」
主人公 「・・・・・」
あやか 「・・・どうなさったの?」
主人公 「い・・いやぁ・・・俺、英語苦手でさ・・・は・・はは・・・も〜、何が書いてあるのかサッパリ・・・」
あやか 「・・・英語じゃなくてフランス語ですわ・・・それに、ちゃんと下に日本語でも書いてあるじゃございませんこと?」
主人公 「そ・・それは・・そうなんだけど・・・」
あやか 「・・・けど?」
主人公 「・・・仔牛とかエビとかはわかるんだけど、その後に書いてある・・・アスピックとかカッペリーニとか・・・何なのコレ?」
あやか 「へ?・・・はぁ〜・・・そんな事も知らないんじゃ、フランス料理を食べる資格なんてございませんわ・・・まったく」
主人公 「す・・・すんません・・・」
あやか 「いいですこと?・・・アスピックっていうのはゼリー寄せの事。カッペリーニは極細のパスタの事ですわ」
主人公 「ふむふむ・・・・・んじゃ、このソースのアメリケーヌってのはどんなの?やっぱ、アメリカンな感じ?」
あやか 「・・・どんな感じですの・・・・・コホン・・・アメリケーヌはオマールエビの殻を砕いて作ったソースですわ」
主人公 「へ〜!さすが彩華お嬢様・・・もの知り〜!」
あやか 「もぉ・・・あなたが知らなすぎるだけですわ」
主人公 「そ・・そんな事ないって・・・あ!じゃあさ!料理がおいしかった時、本場フランスではどうするか知ってる?・・・ほら、こうやって、ほっぺたに指を当てて『ボーノ!』って・・・」
あやか 「・・・それはイタリア」
主人公 「え?・・あ、いやその・・・そ・・そうなんだ!俺、イタリア料理専門なもんだから、フレンチには疎くってさ〜!だから、アスピックとかカッペリーニとか言われても今いちピンと来なくって・・・」
あやか 「コホン・・・カッペリーニは元々イタリア料理ですわよ」
主人公 「う!・・・・・参りました(しくしく)」
あやか 「もぉ・・・しょうがない人ね・・・クスクス」
主人公 「それにしても、なに注文したらいいのかよくわかんないな〜・・・やっぱ、名前見てもどんな料理かよくわかんないし・・・う〜む」
あやか 「ふふっ・・そういう時はこうすればいいんですのよ・・・すみません」
ウェイター 「・・・お決まりですか?」
あやか 「今日のシェフのお薦めは何かしら?」
ウェイター 「こちらでございます」
あやか 「じゃあ、それをいただけるかしら」
ウェイター 「かしこまりました」
主人公 「じゃ・・・じゃあ、俺もそれ」
あやか 「・・・クス」
主人公 「・・・・・ふふっ」
ウェイター 「お客様、アペリティフはいかが致しましょう」
主人公 「あぺ・・・(・・・って何?)」
あやか 「・・・(じぃ〜)」
主人公 「あ・・・コ・・コホン!・・・それは・・その・・・お任せで適当に」
ウェイター 「かしこまりました」
あやか 「そうそう、その調子・・・だんだん分かってきたみたいですわね・・・くすくす」
主人公 「・・ま・・まあね・・ハハ」
あやか 「これからも、わたくしと食事がしたいのなら・・・まだまだ、いろいろ勉強しなくてはいけないことがございましてよ・・・・よろしくって?」
主人公 「はいはい・・・ちぇっ」
あやか 「・・・クスクス」
主人公 「ところでさ・・・・アペなんとかって・・・何?」
あやか 「・・はぁ〜・・・道のりは長そうですこと」
※アペリティフ=食前酒